白秋の名作です…
1月25日の今日は、北原白秋の生まれた日です。
で、私が好きな作品を思い出してみたのですが、不思議な事に題名に「から」の付く詩が三つもありました。こういう言葉の響きを白秋は好んでいたのか?それとも単なる偶然なのでしょうか?
からたちの花が咲いたよ
からりこ
落葉松(からまつ)
この三つです。
そして今日調べたら「とんからこ」という詩もありました。
これも「から」を含み、この題名は機織りの音をあらわしているようですが上記の「からりこ」にも全く同じ事が言えるのです。
そしてこれら四つの詩は何れも有名で曲がつけられているものが殆どです。次にご紹介します。
一一一一一一一一
からりこ
からりこと
音が してるよ
からりこは
下の 谷間よ
からりこの
窓は 日和(ひより)よ
からりこよ
菊の さかりよ
からりこと
筬(おさ)が はずむよ
からりこと
こだましてるよ
からりこよ
誰か 見えたよ
からりこの
音が やんだよ
(注) 筬とは織機の付属品です。
一一一一一一一一
落葉松
落葉松の幽かなる、その風のこまかにさびしく物あはれなる、ただ心より心へ伝ふべし。また知らむ。その風はそのささやきは、我が心の心の(原文のまま)ささやきなるを、読者よ、これらは声に出して歌ふべききはのものにあらず、ただ韻(ひびき)を韻とし、匂を匂とせよ。
一
からまつの林を
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
二
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
三
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
四
からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
五
からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり。
からまつとささやきにけり。
六
からまつの林を出でて、浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
七
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。
八
世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
一一一一一一一一
とんからこ
舌を切られた 小雀は 小雀は
泣く 泣く お宿へかへります
泣いても 泣いても 口きけず
ほろ ほろ 涙で とんからこ
春着のべべでも織りましょか
とんとんからりこ とんそろり
とんとんからりと 織ったとて
織ったとて
切られたお舌は川の中
とんとんからりこ とんそろり
ほろりこ ほろりこ とんほろり