【あすなろ帖】創作・趣味と読書・あの世と宗教のお話

創作は童謡と詩。趣味は音楽鑑賞や折り紙。読書は哲学・宗教・小説・コミック等々。あの世の話や、また仏教・キリスト教・神道・新宗教等々、まだまだありますが、50年近く私の学んで来た事をご紹介したく思います。2019/10/5

人買舟の歌(閑吟集)・私の詩・野口雨情の詩/日本の古典とそれにヒントを得た創作です。

【小鳥の舟】他

閑吟集より

人買ひ舟は沖を漕ぐ
とても売らるる身を
ただ静かに漕げよ
船頭殿

閑吟集」は室町時代の歌謡集です。身分に関わりなく集められたようで、民衆の歌が一番多いといいます。
サイトで注釈を調べてみました。「人買ひ舟」は、女子供を買って運ぶ舟のこと。「とても売らるる身を」とは、運命はどうしようもないという、あきらめのようです。「静かに漕げよ」は、先を急ぐのと、役人の眼を逃れるために、あえて流れの急な海を進んでいるという説があるようで、そうであれば荒海でしょう。
さて、この注釈を読む前に、閑吟集のこの歌に触発されて書いた私の詩があります。そこでは、原作とは違って、静かな海としています。つまり、静かな中に、小鳥の声だけが響くという訳です。これはこれでよいかと思っています。

【小鳥の舟】

貧しい 小鳥の 一人娘
遠くの国に 歌姫と
売られて なくなく 舟の旅

とうさん かあさん 元気でと
告げる 言葉も 銀の声

今は 夕なぎ 静かな海
ゆるり ゆるりと 舟はゆく

登る 満月 悲しげに
小さな 舟を 照してる

ところで、閑吟集のこの歌には、かの野口雨情も感銘を受けたらしく、次のような作品を残しています。

【人買船】

人買船に
買はれて
行つた

貧棒(びんぼ)な
村の
山ほとゝぎす

日和(ひより)は続け
港は
凪(な)ぎろ

皆さんさよなと
泣き泣き
言(ゆ)った